発達障害【AD/HD】の特性をもつ子どもへの支援

ADHA school

発達障害【AD/HD】とは

 

発達障害という言葉をあちこちで耳にするようになりました。AD/HD、ASD、LDが主なものでしょうか。このような発達障害は単独で起こることは珍しく、様々な状態が複合的に絡み合って起こることがほとんどです。それぞれの境界線は限りなく曖昧になっています。

AD/HDとは注意欠如/多動症の診断名です。以前は「注意欠陥/多動性障害」と表していましたが、「欠陥」から「欠如」へ「障害」から「症」へと変わっています。この変化は発達障害全体が「障害」であるというとらえ方から「症状」であるというとらえ方に移行してきているためです。

AD/HDの二つの特徴

 

AD/HDには以下の二つの特徴があります。

✅不注意の問題

✅多動性/衝動性の問題

この二つの特徴が本人の年齢や発達水準に比べて著しく低いことから、適応に支障をきたします。これらの特徴が12歳以前に2つ以上の状況においてみられる場合に診断されます。

原因は遺伝によるもの環境によるものが関連するとされていますが、双子の研究により、高い遺伝率が示されています。

AD/HDが発症する原因としては脳内の神経伝達物質(ドーパミン神経系)の調整が適切に働いていないことが指摘されています。

AD/HD 不注意の問題

不注意の問題は活動に集中できず、持続性が低いことです。

物事に集中できないために片付けをしている途中で他のことに気をとられ、机の周りが片付けられない、先生の話を長く聞いていられない、授業中の課題に継続して取り組めないなどがあります。作業や学習が継続できないため、年齢相応の知識や技能の習得が不十分となり、自己肯定感が低くなる、問題行動の原因となるといった二次障害にもつながっていきます。

不注意の問題はある程度成長したあとも抱え続け、最近は子どもの発達障害だけでなく、「大人の発達障害」といった言葉でクルーズアップされたりもしています。

AD/HD 多動性/衝動性の問題

多動性/衝動性の問題では、授業中に座っていられずに頻繁に席を離れて動き回る、座っていても常に体の一部が動いている、といったようなことが見られます。

多動性は成長とともにあまり目立たなくなっていくこともあります。

衝動性は感情の起伏が激しく、直前まで静かに学習に取り組んでいたのに、何かをきっかけにして急に怒り始めたり、大声を出したりします。逆にたった今まで激しく怒っていたのに、何もなかったように振る舞うこともあります。普通ではあまり考えられない行動パターンが見られます。

また、衝動を抑えることが難しいために、待つことが苦手でルールを守ることができないことがあります。指示を理解することはできても従うことが難しいのです。

AD/HDの支援

AD/HDの子どもは、その行動上の特徴から大人からの叱責を受けやすく、友達からも非難されることが多いです。そのためAD/HDの子どもの自己評価は低いといわれています。青年期や成人期にも症状が持続することで「うつ病」「不安障害」を発症しやすいことが指摘されています。

また、周りの人たちの理解不足や不適切な対応によって、自分を受け入れてくれない周囲に対する敵意や怒り、嫌悪から「反抗挑戦症」や、より反社会性が強まった「素行症」が現れる場合があります。

これらのAD/HDの特性をもつ子どもに対しては、適切な支援による問題行動に対する対処だけでなく、自尊心や自己肯定感を高めていく、周りの人たちの工夫や努力が大切になってきます。そのことによって二次障害の予防にもつながっていきます。

AD/HDの特徴をもつ子どもに対して具体的にはどのような支援が考えられるのでしょうか。

AD/HD 具体的な支援

<学校または家庭で>

  • 指示は短くシンプルに
  • 学校の席は一番前がよい(他の児童が目に入らないように)
  • 学校の黒板の周りはできるだけシンプルに(他の情報が目に入らないように)
  • 授業中の板書は端的に
  • 時々、体を動かす活動を取り入れる
  • 変更やいつもと違うことがあるときは、事前に伝える

<自己肯定感を高めるために>

  • できないことよりもできることに目を向ける。「できた」体験を積み重ねることで次のやる気につながります。
  • 強味に目を向ける。自分の好きなことに関しては集中力を発揮できる子どももたくさんいるので、強味を発見し、伸ばすことで自信につなげる。
  • 失敗しないために声掛けをする。子どもを常に観察し、一緒に行動することで、失敗しがちな場面を知ることができます。失敗しそうな場面では、周りの人たちが先回りして失敗させないようにしてあげることができます。
  • 一緒に対策を考える。一緒に対策を考えることで失敗を回避できた成功体験を積むことができます。一緒に考えていくことで自分の特性との付き合い方を探していくことができます。

これらの支援は一見、特別なことに見えますが、実は発達障害を持つ、持たないに関わらず、すべての児童・生徒にとって分かりやすい、とても基本的な指導の方法です。ユニバーサルデザインとも表現されます。また、すべての児童・生徒が共に学ぶインクルーシブ教育という考えかたです。

<関係諸機関との連携>

発達障害児の養育には、大きなエネルギーを使います。特に家庭で少数の大人が養育に当たっている場合はなおさらです。

幼児や児童・生徒においては、保育園・幼稚園・学校の担任の先生などを通して、特別支援に関係している先生や指導者、スクールカウンセラーや自治体の支援課などに協力してもらい、児童・生徒の養育を一人で抱えこまないようにすることが大切です。

養育者が健康を損なってしまったら、子どもたちを安心して健康に育てていくこと自体が困難になってしまいます。

時には適切な医療機関を受診し、投薬を受けることも大変役に立つことがあります。

十人十色

 

AD/HD まとめ

AD/HD
不注意の問題 活動に集中できず、持続性が低い
多動性・
衝動性の問題
静止状態が保ちにくく、過度に落ち着きがない
ルールを守ることができない
支援
・集中を阻害するものを排除する
・失敗を回避できるように支援する
・強味に目をむけ成功体験を積ませ、自己肯定感を高める
・医療機関を受診し、適切な投薬をする

 

保護者の方も、学校の先生も目の前の子どもと、たくさんの幸せな時間を過ごせることを祈っています。

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