『学級崩壊』という言葉が脳裏をよぎったときにすること

学級崩壊 school

だれでも一度は・・・

 

『学級崩壊』という言葉は残念なことにあちらこちらで聞かれるようになりました。そして学級を担任している先生なら、たぶん一度はちょっとヒヤッとしたことがあるのではないでしょうか。

学級崩壊はどうして起きるのか。それを起こさないために予防的な立場からもどのようなことが必要なのか。ポイントをお伝えしていきます。

この記事を読むことで、学級崩壊を起こさないための方法を知ることができます。

学級崩壊とは

学級崩壊

「学級崩壊」とは、一言でいえば、児童や生徒に対しての教師からのコントロールが効かなくなった状態。

児童や生徒が教師の意図に反する行動を始め、止めることができない。指示が通らない、学校生活のルールが守られない、授業が成立しないなどの状態を指します。

学級崩壊には段階的なレベルがあります。初期段階(レベル1)はまだ回復の期待がもて、適切な指導や介入が行われれば、未然に防げるレベルです。あとになってから、「あのときにこうしていれば。」と後悔される様々な出来事がありますが、多くの場合手だてが施されることなく、中期、末期へと進行してしまいます。

児童・生徒の行動としては、授業中のおしゃべり、手紙をまわす、特定の児童へのいやがらせ(いじめに発展する)、物がなくなる、忘れ物の増加、学級内でのけがの増加、喧嘩やいざこざの増加、授業中の立ち歩きなどが見られます。特に給食配膳時や休み時間、朝の会、帰りの会での統率の難しさが目立ってきます。

中期段階(レベル2)はいよいよ学級崩壊が誰の目にも明らかで、適切な対処がなされないと末期段階へと進んでしまう、危険な状態です。上記の児童・生徒の行動がエスカレートし、頻度が増し、学級担任一人ではどうしようもできない状態へと陥ってしまいます。

末期段階(レベル3)はもはや授業が成立しない段階です。学級担任は精神的にも肉体的にも追い込まれ、最悪の場合は学級担任を継続していくことが難しくなります。精神的、肉体的な不調を訴え学校に来ることができなくなってしまう教師もいます。中学校においては教科担任制のため特定の教科の授業で発生する場合もあります。

残念なことにどの市町村や区でも1年回に数名の教師が休職に追い込まれるケースが発生しています。

<学級崩壊のレベル>

段階   状態 
 初期段階

 レベル1

問題行動が出始める
 中期段階

 レベル2

問題行動がエスカレート 

止められない

 末期段階

 レベル3

担任一人ではもはや

対処できない

 

学級崩壊を防ぐために

では、このような学級崩壊を防ぐためには、どのようなことが大切になってくるのでしょうか。

一番大切なことはレベル1の初期段階で担任がその変化に気付くことです。わかりやすいのは、

  • 授業中の私語が増えた
  • 忘れ物が増えた
  • 授業中に立ち歩く生徒がいる
  • けがやいざこざが増えた

などの小さな変化に気付くことが大切です。担任をしていたら、授業中の私語が増えると思うように授業が進められなくなったり、いざこざや立ち歩きで授業が中断されたりとスムーズに普段の学校生活が進められなくなることで簡単に気づくことができるはずです。

そのような変化に気付いても、何もしなければ問題は解決するどころか、レベル2,3とどんどん状況は悪化します

何が児童、生徒にそうさせているのか

チェックすべきは以下の点です。

✅児童・生徒がストレスと感じていることは何か?

✅特に担任が変わった場合、前の指導と現在の指導に大きな違いはないか?

✅授業中の指示や学級での指導は児童・生徒に理解され受け入れられているか?

✅発達障害や児童一人一人の個々の問題を把握、理解し適切に対処しているか?

✅家庭内の問題や部活動での問題、友達同士の人間関係など誰がどのような問題を抱えているかを把握し理解をしているか?

学級崩壊やいじめは児童・生徒のストレスが大きな原因です。

学級の児童・生徒にとってのストレスは何かを的確に見極める必要があります。

児童・生徒のストレスを洗い出す

児童・生徒のストレスとなっていることは、時に担任にとってとても理不尽な場合も少なくありません。

たとえば、「(担任が)うざい」「宿題が多い」などです。「宿題が多い」はいろいろ工夫していくことも可能ですが、「(担任が)うざい」という反応に対して、どのように対処していくことができるのでしょうか。

担任が自身の言動について一つ一つ点検する

特にここで大切になってくることは、自分自身と児童・生徒の感情にフォーカスすることです。

✅朝、初めて児童・生徒にあったときどんな声かけをしたか。そのときの自分の感情、児童・生徒の感情を確認

✅朝の会で、担任はどんな話をしたか。そのときの自分の感情、児童・生徒の感情を確認。

✅授業中の担任の発言や発問に対する児童・生徒の反応はどうだったか。そのときの自分の感情、児童・生徒の感情

✅休み時間や昼休み自分はどんなことを言ったか。その時の自分の感情、児童・生徒の感情。

この点検によって見えてくるものがあるはずです。

確認すること

✅児童・生徒に対して上から押し付ける内容の発言をしていないか。

児童が「宿題やだ」と言っているのに「宿題をやるのはあたりまえでしょ。」と言っている。宿題をだすことは教師にとってあたりまえの行動ですが、「宿題がいやだ」という児童・生徒の感情を受け止めて処理するまえにそれを強要してしまうとそこに亀裂が生じます。

✅児童・生徒が何かを言おうとしたとき、それを遮って自分(担任)が言いたいことを言っていないか。

たとえば児童が「先生、昨日ねママとパンケーキを作ったんだよ。」と言っているのに、言い終わらないうちに「宿題出した?」ときくようなパターンです。こちらも折角児童が感情を発信しているのに、それを遮断しています。いくら教育相談で「なんでも話していいのよ」と言っても、子供たちは、もはや何も話しません。

✅担任が自分が児童・生徒にさせたいことを優先させていないか。

上記のように、あらゆる場面で児童の感情を後回しにして、自分が児童に「させたい」ということを優先させていないか。

✅担任が何かを話すとき、その奥底にある感情はどんなものか。

自分が早く仕事を終わらせて他の事務仕事をしたいのか、隣のクラスより授業がおくれているから授業をサクサク進めたいのか、仕事を早く終わらせて同僚や管理職に認められたいのか。早く仕事を終わらせて、自分の趣味や好きなことに没頭したいのか・・・

人間の行動の下には必ず感情があります。その感情は児童・生徒の役に立つ内容なのでしょうか。言い方をかえるなら、児童・生徒のことを思っていますか?

✅担任の話を受け取っている児童・生徒の感情はどんなものか。

一度感情の芽をむしり取られたら、こころが小さなけがをします。2度、3度と続くともはや教師を信頼する心はゼロになります。ストレスを溜め、最終的には教師への憎しみという感情をいだくようになります。とくに攻撃的な児童・生徒、感情豊かな児童・生徒に至ってはそれが顕著です。

 

学級崩壊しました

何を隠そう、この私自身も学級崩壊を経験しました。

4月当初、担任を持ったばかりのころは「騒がしいクラスだな」と感じはしましたが、5月の連休明けは学級崩壊レベルが1から2へ移行しようとしていました。

学級内の問題、友達関係のトラブルに振り回されてなかなか授業が進みませんでした。

そしてついにいじめが発生し4月、5月と見えないところで進行していたいじめが6月には、ついに表に出てきて、保護者からのクレームを受け、管理職も交えた学校体制での対応を余儀なくされました。

そしてクラスの中の支援の必要な児童の問題行動がエスカレートし、友達に対する暴力沙汰で、けがをさせてしまった相手の児童の家に該当保護者と連日誤りに行くという事態に追い込まれました。

このころの授業はほとんどギリギリのところで成立していましたが、給食の時間は壊滅状態でした。

学級崩壊

ここでやっと私は管理職や周りの先生にSOSを出しました

教務やフリーの先生が、給食時や休み時間に教室に入って下さり、獣と化した児童たちを指導して落ち着かせてくれました。

給食時や休み時間の喧騒はものすごかったものの、授業はギリギリ成立していたので授業中には担任以外の先生方は入りませんでした。

この時、救いだったのは心優しい女の子たちが私の周りにいて、私を慰めてくれたことです。でも「先生、学校辞めたい?」と聞かれたときには涙腺が崩壊しそうでした。

6月ごろ、約一か月の介入の末、何とか担任一人でやっていけるレベルまで回復し、2学期、3学期へと続けることができました。

ここで私が学んだこと

今、振り返ってみて学級が崩壊した一番の理由は担任が変わったことでした。その学級は1,2,3年と3年間同じ先生に担任されていていました。

初めての担任の変更だったのに、体育会系上がりの私は自分流の高圧的な指導を改めず、4年生に対して5,6年生に対するような指導をしていたと思います。

二つめは発達障害を含め、特別な支援を要する児童が学級内に約半数以上いたにも関わらず、きめ細かな指導計画を持たないまま学級経営を進めてしまったことです。

恥ずかしながら、表向きには学級崩壊の理由はこのことが原因だと他言しています。でも、根本は違うことを自分は知っています。

三つめはこれが一番の原因ですが、私がきちんと子供たちの感情を受け止めていなかったことです。

きちんと相手の感情を汲み取って、日常的に一つ一つ丁寧に対応していれば、学級崩壊は起きなかったと思います。

 

学級崩壊は防げる

もう一度「学級崩壊を防ぐために」をご覧ください。

学級崩壊の兆候、進み方、原因、対処方法など。

そして、もっと重要なことをお話しします。教師のマインドセットです。

学級崩壊を起こさないための教師のマインドセットとは

自分は『プロである』という自覚を持つ

✅その考えに従って、常に笑顔で

✅すべての児童・生徒を受け入れる

✅暴言を吐かれ、心が傷ついていても渾身の笑顔を作る

児童の感情を受け入れることはとても重要です。しかしそれを24時間継続していく必要はないのです。なぜなら、教師というのは「仕事」です。だから「仕事中はプロ意識をもって児童・生徒の感情にフォーカスする。」と自分自身に言い聞かせればいいのです。

教師のマインドセットを難しくする要素

それは、ネガティブな感情です。

学級が崩れ始めると教師も心が壊れていきます。そしてネガティブな感情が心を支配し始めます。

「どうして自分だけがこんな目に合わなければいけないのか」

「(プライドが邪魔をして)だれにも相談できない」

「どうして同僚や管理職は助けてくれないのか」

「〇〇(児童や生徒)が憎くてたまらない」

「自分がこんな目にあっているなんて、絶対に家族には話せない」

等々です。ここでは残念ながら、自分の教師という立場は仕事であることを忘れ、学校でのいやな体験が頭から離れず自分の生活全体が侵されていきます。ネガティブな感情に支配されています。こうなってしまうと回復への道のりは途方もなく遠いものとなります。

マインドセットを確立するために

まず、何が一番大切かを確認しましょう。

今は目の前に児童・生徒を落ちつかせ、平穏な学校生活を取り戻させることが第一です。そのためには、一時のプライドを捨てて、なるべく初期の段階で同僚や主任、管理職に相談をしましょう。

スクールカウンセラーや専門家のコンサルテーションを受け、自分がどう行動すべきかを確認しましょう。

割り切った考え方ですが、目の前の児童・生徒はたった数年、もしくは1年間の付き合いです。

今を乗り切り、困難を乗り切ったという自信につなげられるように、自分自身が壊れてしまう前に手を打ちましょう。

相談する勇気を持ちましょう!

教師のコンサルテーション
検索

学級崩壊を防ぐ まとめ

  1. 自分はプロであるという誇りを持ち、常に児童に感情にフォーカスする。
  2. 自分一人で抱え込まず、少しでも違和感や問題点に気づいたら、主任、管理職、専門家にまず相談する。

 

いかがでしたか。この記事を書いたaoiは専門家(認定カウンセラー、学校カウンセラー、公認心理師)として、悩める教師の相談に乗っています。いつでも気軽に連絡してください。

そらのたまご

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました